へのへの先生仮免中

やっぱ教授になるまで仮免中で行きます(なれるのか)、神経系の研究がメインです

Nature論文を読むγセクレターゼは復権するか

最近有吉の番組が好きで、録画とかを見ている。

マツコ有吉の怒り新党から結構好きなんだけど、まぁ根底にはこの人面倒見がいい優しい人なんだろうなという気はする、面白いし。

 

また論文レビューが流れてきた。いい加減誰かに押し付けたいので、後輩あたりが出世してくれまいか。

データはしっかりしてるなぁと思って読み始めたが、なんか一番最初のWBとその評価のグラフが全然整合性がなくてちょっと気力を無くしている。

せめてもうちょいRepresentativeなデータだせや(叫び)

 

Nature論文を読んだ。

悪い意味でなく、懐かしい生化学の匂いのする論文だった。

アルツハイマー病ではAmyloidβ(Aβ)というペプチドが脳に蓄積していき、凝集状態が形成されると神経毒性が発揮されるというアミロイド仮説が発症仮説として有力である。

例えると、なんだろう、まぁどんな人でも加齢とともに脳の砂時計の砂がたまっていくんだが、個人ごとに落ちてくる砂の量が違うのでおんなじ年をとってもADになる人とならん人がいるみたいなイメージ⏳。

じゃぁ砂たるAβのたまる速度の違いはどこにあるのか?というのは議論が起こるところである、まぁたぶん答えは人によって違うなんだが、そういう論旨で話をしていると進まないので、なんかあるという前提で進める。

本論文の要旨としては

  • エーザイ開発のγセクレターゼモジュレーター(GSM:毒性のあるAβタンパク質の産生のみを特異的に抑制し、本来必要な生理的活性を残すことができる薬物群をモジュレータと呼ぶ)E2012に結合する因子としてIFITM3が同定された
  • IFITM3は活性型γセクレターゼ複合体に含まれ、その活性を亢進する作用を持つ
  • 加齢、ADモデルによるストレス、炎症性のサイトカイン(IFN)により神経、アストロサイトのIFITM3が増加し、γセクレターゼとの結合が亢進することで活性が亢進する
  • IFITM3の発現量がAD患者の脳内γセクレターゼ活性Aβレベルと相関した。
  • IFTIM3のKOとADモデルマウスの掛け合わせでAβ凝集が減少
  • IFITM3との結合により、各GSMやGSIのIC50に変化するなど、構造への影響が示唆された。

意義としては

  • 炎症性ストレスによるγセクレターゼ活性化という可能性(類似論文はいくつかあり)を補強するデータである。
  • 疾患依存的といえるγセクレターゼ(IFITM3結合)があり、選択性のある薬物の開発(E2012もそうかもしれない)の可能性を示唆した(のかな?)。
  • GSMの機能制御機構の解明の緒

というところで、なるほどNature的な面白さがあった、データは基本的にはきれい。

ただよく考えるとなかなか整合性のつかない所というのはどうしても残る、この辺は批判というより、仮説的にはγセクレターゼに集中しないと論文が出ないんだけど、たぶん活性以外にも経路があるんだろうなというところ。

若干うーんと思ったところが

  • 今までなぜ見つからなかったのか?このたんぱく質の見つかった方法が、E2012の使用も含め、そこまで特殊な方法ではない。猫も杓子も構成因子を探していた時期に見つかってもおかしくないのでは(ガンマに対する影響が少ないのでオミットされたのかもしれない)
  • 加齢で初めて複合体ができるという話が途中にあるが、最初の方のデータは通常の培養細胞がおおく、齟齬があるといえばある、最初の何で見つからなかったん、という問いにもつながる。
  • 抗体の感度もあるので、強くは言えないが、どうもIFITM3とγセクレターゼ複合体の結合が1:1ではなく、かなりIFITM3が多いようには思った、E2012化合物との結合についてはDirect targetなんだと思うが、単なるIPは説明つくんだろうか。E2012の結合は正直ノンスぺもありそうに思ったんだが。
  • 孤発性はわからないが、家族性のPresenilin変異の多くは(総体的な)γセクレターゼの活性低下があるという報告もある、現状の仮説トレンドが変わっているのかもしれないがPS1に変異を持つ5xFADのような特殊なモデル動物の使用もあり、γセクレターゼ活性が加齢とともに上がる、というデータ等、すべてのモデルで作業仮説に従いすぎ、一貫性が取れすぎ、きれいすぎるきらいはある(説明つかないことはないが)。
  • γセクレターゼに注目するあまり、他の可能性については極力データがOmitされている印象は持った、もう一つのAβ産生酵素BACE1活性、Aβの分解等に影響はないのか、少しAPPの代謝経路の解析が少ない傾向にはある。
  • E2012の感受性がIFITM3のKOで変わるのだが、E2012の特徴としてAβ42(毒性Abeta)の産生阻害が強くかかる、というところにあるはずなのだが、なぜかAβ40(毒性低い?)の産生に対する影響のみIC50の増加がみられた。ちょっとこれは説明つきにくいなと思うんだが、データの誤解もあるかもしれない。最近阻害薬の研究は食指が伸びなくてさぼってたからなぁ。
  • アストロサイトでγセクレターゼ活性が上がる、というデータの意義づけはちょっとわからなかった。まぁもちろんあっていいんだけど。APPがあまりない細胞種だし
  • 炎症性サイトカインでγセクレターゼ活性増加、だが、サイトカインが上昇する神経の病気は結構あるはずなので、AD特異性があるの?というところには疑問あり。まぁ何らかのもうひとファクターくらいあるんだろうか。

あら、おおい。

まぁあら捜しはできるよね、でも論文出せる方が強い世界だし。

人にたくさん文句を言われる面白い論文を書かなきゃね。