へのへの先生仮免中

やっぱ教授になるまで仮免中で行きます(なれるのか)、神経系の研究がメインです

新規AD治療薬の承認の感想・Discussionを練りながら・Goldengate法~頭を使うクローニング

だいぶ逆風が吹いていた記憶しかなかったが、エーザイ・バイオジェン連合のAducanumabがとうとうアルツハイマー病治療薬として承認されたとか。

www.bloomberg.co.jp

自分の関わらないところでAD治療薬ができたというのは少し寂しさを感じたなぁ。

患者さんのことを考えれば喜ばなければいけないけど、もう20年も研究してきたけど自分には何ができただろうか。

日暮れて道遠し、頭が冴えていた時代はもう遠く、これから残せるものがどれだけあるんだろうか。

ただ抗体は薬価は高くなりそうだし、効果的には単剤で現在ある薬物より優位なのか?という問題はでてくるだろう。

イギリスやフランスではドネペジルでさえコストに見合わないという論争があるみたいだし、保険適用されるほどの効果が見込めるかが今後のポイントなのかも。

 

gendai.ismedia.jp

実際にはより早期の治療が、この抗体のキーとなる仮説、アミロイド仮説、での治療に必要なのではないか、と考えられているのは覚えておかねばならない。

より早期のバイオマーカーの理解が必要、

個人的にはAducanumabは単体では効果が少なく、何らかの組み合わせ療法、多分神経炎症に関わる薬物との併用が有効ではないかと思っている。

 

学生がDIscussionを書いて持ってきた。

僕も自分が正しいと思うことはなく、自信は持てないところだけど、論点が章立てである程度固まっていない印象で、行って帰ってが多すぎるんじゃない?

ということで、ミーティングをして、ポイントポイントである程度議論を絞って、段階的に核心に迫ろうね、と話し合う。

7月投稿を目指すが、なかなかにギリギリではある。

 

クローニングは苦労人ぐ。

まぁそんな話題はもう古いのかもしれない。

先輩が90本くらいミニプレップをかけて、ポジティブクローンを探していた姿が懐かしい。

今日はGoldengate法の特徴を語ってみたいのだが、まぁもうあまり使わない手段かもしれない。

というのはGibson assemblyがコスト的にも、技術的にも圧倒している部分があるからではある。

さてそんな化石めいたクローニングの話をするのだが、まずTAクローニングからかたらねばならない。

www.thermofisher.com

これはベクターを平滑末端で切断して増幅酵素であるTaqをつかってTをつけるか、もしくは末端にTが1塩基だけ残るような制限酵素で切断する。

大事なのはTが先端に1塩基あることだ。

T-Vec-T

さて、最近のPCR酵素は正確性が高いのだが、TAクローニングには不向きであり、基本的には平滑末端になってしまう

最後のPCR反応時にTaqを混ぜる(確実なのは一度PCR産物を精製して反応させること)と、一定の確率で末端がA-PCR-Aとなる。

TとAは相補的なので、リガーゼを混ぜて反応させるとベクター内にPCR産物をクローニングできる、これがTAクローニングである。

安価なので今でもよく用いられる方法だが、欠点は多く、まず配向性がコントロールできず、裏にも表にもなりうる。

ベクターPCRの関係は1:1にしかならないので複雑なクローニングに不向きである。

いくつかのサブユニットをクローニング技術で思った通りの順番で組み合わせたいというような場合にはTAクローニングは使えない。

最近あまり聞かなくなったTALENというゲノム編集技術では、あるDNA結合性をもつユニットを自由にならべて、組み合わせたいという場合があった。

www.thermofisher.com

ここで大働きしたのがGoldengate法という手法であった。

いくつかのパターンが有るのだが、制限酵素が認識配列の外側の任意の配列を切断するというところを利用している。

たとえば○☓が認識配列、AAAA、GGGGが任意の塩基としよう。

○XAAAAーTARGETaーGGGG-☓○ これを○Xを認識して外側(3’-側)を切る酵素と反応させると、結果的にAAAA-TARGETaーggggという断片ができることになる

文章では書きにくいのだがGGGGggggは相補的配列という認識でよろしく、正確ではないのだが

さてもう一つ○☓GGGGーTARGETbーCCCC☓○というPCR産物を反応させると

GGGG-TARGETb-cccc(ccccはCCCCの相補配列)

ができる。

ベクターに同様の酵素を反応させ、aaaaーVector-CCCCという配列ができるように設計できていれば、ベクターと2つの酵素処理産物を合わせてライゲーションすると、相補配列で結合するから

TARGETA-TARGETbが任意の順番になってクローニングされることになる。

この断片のバリエーションは上の酵素の場合だと4×4×4×4であることになるので、まぁおおよそ200以上のサブユニットを任意の順番で組み合わすことが原理的に可能。

4というのが3で動くコドンとなかなか相性が悪いが、うまく計算ができさえすれば便利

www.nebj.jp

ただどうしても計算がしんどくなるしGibson使えばいいじゃんということで、楽しそうな方法だが昔特殊なベクターへのクローニングで使ったきりではある。