とある会議で、メトホルミンはもうAMPKでは説明できないの!とかいう話題が出てきて、え、私教えていたことと違う、と思って勉強することにした。
どうも肝臓のAMPKの活性化で説明できないということらしいが。
さてメトホルミンだが、インスリンと同じくらいの歴史があり、最古に近い薬物。
*Chemspiderの画像
フランスで承認されたのが1959年であるから、実に60年の歴史を持つ。
古いというと欠点の多い薬とみがちだがエビデンスが豊富だということでもある。
たしかに乳酸アシドーシスなどの副作用がきついが、薬価が安く、体重の増加抑制も期待でき、II型糖尿病で問題となるインスリン耐性が改善できる強みもある。
懸念される乳酸アシドーシスも肝臓や腎臓に障害がない限り、ほとんどおこらない副作用である
一時忌避されていたが、2型でよく使用される薬物となる
さて、古い薬あるあるだが、あまり作用機構が詳細にわかっているわけではない。
AMPというエネルギーの前駆体のようなものに活性化されるAMPKを活性化すると言われているわけだが、その活性化機構がよくわからない。
そこがわかったPEN-2だったというのが今回の論文のオチである。
ていうか、冒頭の会議でampkとメトホルミンの関係は怪しいという話だったが、これはAMPK活性化してますよというデータでは。
間接的だろうが、活性化で良いのでは?
まぁ聞き違いだったのかも。
しかし、うーーーーーむ地獄のようにデータが多い。
コンパウンドを使って薬理学者がやりたい実験をやってやったぜ、というエネルギーは感じる。
Low-doseというのが結構引っかかる。
臨床的な濃度という設定らしいのだが、そのへん厳密にやるなら動物見るのかな。
高用量で、PEN2関係なくなってしまうのをどう取るかだなぁ。
個人的にはPEN2がふらふら細胞をぶらついているような論旨が気になった。
PEN2はアルツハイマー病でAbeta産生に関わるガンマセクレターゼ構成因子
単独ではかなり安定性が低いことが知られている。
ガンマセクレターゼ関連因子のPS1/PS2KOでPEN2はかなり減るはずなのに、メトホルミン依存性AMPK活性化には関係ない、さて、この式は成り立つのか?
ATP6AP1と結合しているフラクションがあるんだ!と納得して読もうかと思ったけど、うーん。
PS1/2KOでPEN2を免疫染色あたりで白旗、何が染まってるのかようワカラン免疫染色だし、これはPEN2染めてるんだろうか?
一部ATP6ap1結合フラクションあるとしても全体的には減っていないとおかしいし、細胞がべったり染まっておる
さらに過剰発現で一部Lysosomeにある!ってそりゃあるだろうけど、分解されてんじゃ無い?
とにかく過剰発現系が多すぎて萎えるところはある。
まぁブーメランだけど。
動物のデータも、ガンマセクレターゼ活性で説明つく気もせんではない、あんまりドラスティックではないしなぁ
PEN2KOでガンマ活性もほとんどなくなるし、基質の切断活性変化もでる、その影響は排除できまい
後notch関連データはこの人たち勘違いして無いかなぁ。NICDあたりが怪しい
動物でampkだけの影響をみるのはむずかしいんじゃないだろうか、なんだったらガンマセクレターゼがAMPK活性化するとか実験してやろうか。
個人的にはどうも整合性がつかないとこが多く投げてしまった。
Nature、まぁデータは多い、がどうも見ていて納得できないのがある。
すごい発見を見逃してるのかもしれないけど、だめだイラッとしてしまった、人生には読まなくて良い論文もある。
誰かに素晴らしい論文じゃないか!と言われたら、改心して読もう。
3分位正しいとすれば、ATP6apとPEN2あたりは研究できるか?