へのへの先生仮免中

やっぱ教授になるまで仮免中で行きます(なれるのか)、神経系の研究がメインです

作者もキャラを忘れてそうな円紫さんシリーズ新刊・教えて楽しい場合・研究者の業・ALS/FTD関連TBK1変異はロスオブファンクション・ALSモデルマウスにおける筋肉の糖代謝変化

本屋めぐりがやめられないのは、宝探しに似た気分かもしれない。
今日は何年ぶりかの北村薫のシリーズの新作を見つけてしまい、購入。
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めちゃくちゃ懐かしいな円紫シリーズ、作者が覚えていたのがビックリだ。
この前の巻の朝霧が出たのが1998年みたいだからなぁ。
最初は日常系のミステリーとして始まったシリーズですが、後半からなかなかついていくのが難しい文学古典ミステリーに変わっていき、本作もその系譜を引き継ぐみたいです。
作家も年を取ってくると、段々ヒトに読んでもらいたいってよりも、これを書きたいって思い入れの方が強くなっていくように思います。
間違いなく北村薫氏は文学オタクですな。
夜なく蝉の巻が面白かった記憶。
姉妹、最初仲が悪いんですが、ふっとお姉さんがお姉さんらしくなった時期、何が起こったのか?みたいな話だったともいます。

まぁなんだかんだ言って、これ勉強しなよ、って言って、曲がりなりにもやってくれる所は、留学生はすれてなくていいなぁと思います。
身についた教育というのは恐ろしく、日本の受験戦争をくぐり抜けた猛者たちは、確かに頭が良くて、理解力は高い。
一方で彼らはあまり自分のやりたいことが無くて、目標以上の事をやろうとしないで満足する傾向がある。
交渉でこちらの妥協を誘おうとするヒトもいる。
そういう奴らは、教えても目が輝かないから好かない。
なぜベストを尽くさないのか、とは言いたくなります。
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こんな本があるんか。
まぁでも日本の言い回しが通用しなくて、二度三度言い直す必要があるのは若干辛かったりします。
ちょっと態度が悪いけど、うつ伏せになったりラク-な姿勢で話を聞くことにしています。
こちらまでかしこまって聞いていると、イライラが増幅しちゃうんですよね。

O君が帰国したと思ったら、N君は海外に旅立って行きました。
春ってのはそういう季節なんですかね。
留学した人たちには、たまにメールを送って消息を確かめることにしています。
一人で留学していた時、なんとなく世の中の全てから忘れ去られたような、切ない気分になった事も多かったので、まぁせめて後輩たちには、俺はお前のこと忘れてないぞ、気にしてるぞって言ったほうがいいのかと思っていたりします。
ま、多分におせっかいな気もします。
海外話とかも聞けて面白かったりするんですけどね。
むしろ海外楽しんでる感じだと、我が身を振り返って微妙な気分になったりもします、やれやれ、人間は完璧にはなれませぬ。
良く想像するんですが、自分が教えた教え子がノーベル賞を取って、受賞講演のなかで、「ヘノへの先生がいなければ、この研究はなかった!」とか言ってるのを聞いて、年老いて一人さみしく生きている私が、ヨボヨボしながら、叫ぶんです。
そのもの蒼き衣をまといて金色の野に降り立つべし
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いやいや、まぁ気分は出てるんやけど、ちゃうで、なんでこんなセリフ出てきたんやろ。
「わが生涯に一片の悔いなし!」
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うーむ、あってるんだけど、あってるんだけど。
まぁいいや、こんなこと言ってる自分を思い浮かべるんですよね、赤毛のアンかよ。
でも実際自分の性格考えると、猛烈に弟子に嫉妬すると思うんですよね。
負けたくないって思うもの。
まぁ結婚の早さとか人生とか、そういう話はしてないよ、それはもう負け慣れた。
僕の背中はみんなの足跡でいっぱいさ、べいびー。
話をもどそう、嫉妬、プライド、研究者の業ですな、業。
最近准教授やら、助教やらのショッキングな事件が増えてくると、僕も年を取ったらなんかの業にとらわれて、ストーカーやら、アカハラやらなんやらにとらわれるんじゃないかって怖くなりますね。
多分根本的に自分が大事にしているもの、ってものを切り替えるのがとてもうまくなくて、むしろ突き詰めてしまうような人種が多いんじゃないかなぁ。
森博嗣喜嶋先生の静かな世界ってのを読むと、そんな学者の狂気にもにた執着ってのが感じ取れたりします。
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さて、サイエンス、サイエンスってなんじゃらほい。
サイエンスは食えない(意味深)
コホン、そういえば、前ScienceにALSの新しいリスク遺伝子TBK1ってのがでてましたが、Nature Neuroscienceにも同様の報告が出ました。
ScienceはALSだけでしたが、Nature neursciの方は、前頭葉認知症にも関連するみたいで、また前者はALS患者、後者は家族性のALSを解析など、微妙な違いがあります。
僕はNature Neursciの方が完成度が高い気もするんですけどね、ちゃんと、TBK1の変異でロスオブファンクションが起こる事を示しているし。
ユビキチン系、もしくはオートファジー系の関わりが深く、また神経内の免疫炎症反応(この辺はもうセットなのかも)とも関わっており、興味深いです。
他の神経変性疾患にも関わっていてもおかしくないのに、こんな遺伝子は結構ある一定の病気にオチたりします。
それとも、ALSをしのいで、長く生きることができたら、こういう変異がADやPDを引き起こしたりもするのかなぁ。

ALSネタでもう一つ、EMBO molecular medicineを覗いていたら、ALSでは筋肉の解糖系に異常があらわれてんじゃないか、というなかなか斬新な論文が出ておりました。
面白いんですが、筋肉のエネルギー消費は糖の分解で賄われているんですが(その方がスピードが早い)、エネルギー枯渇時には脂質による補助で凌ぐ事も行われます。
ところが運動神経が死に始めていない、初期(65Day)のALSのモデルマウス(SOD変異型)の筋肉では、定常状態で脂質サポートが動いており、その結果として、高いエネルギー効率を必要とするストレス負荷の高い運動(無酸素運動)にたいしては、ALSマウスの運動成績は落ちるのですが、弱い負荷の継続で持久力を要する運動(有酸素運動)に対しては、かえってモデルマウスのほうが結果が良好(つまり持久力がある)らしいです。意外。
どうも糖分解に関わる、Phosphofructokinase 1(PFK)の機能がALSモデルマウスで活性・発現が減少しており、逆に脂質サポート系(この用語は正しくないかも)のpyrvate dehydrogenase 4(PDK4)の発現が上がっている。
こういった糖代謝ミトコンドリアの機能を介しており、ミトコンドリアの機能異常でこういった解糖系のバランス変化が起こっている、という向きに議論したいようでした。
加齢がすすむと、筋肉の強さが、ALS、マウスで弱ってきます。
ちょっと解糖系の説明をする自信がないので、端折って書きますが、バランスの変化を生み出すキナーゼである
PDK4の阻害効果を持つdixhloroacetate処理を行うと、各値が改善して、加齢による筋力の低下が抑制できるそうです。
さて、じゃぁALSマウスの寿命どうなるの?ってのが気になるところですが、書いてないんですよね・・・
このターゲットはクオリティライフをあげるんだ!って書いてあるので、逆に言うと、神経細胞が死ぬのを防ぐ、というわけではないのかな。
今ひとつ、じゃぁSOD変異はどうやって解糖系のバランスをこわしているのか、ってのもわからなくて、悶々とします。
でも脂質とALSってのは、段々論文が出だしているところでもあるので、ターゲットとしてはありかなぁと思います。