へのへの先生仮免中

やっぱ教授になるまで仮免中で行きます(なれるのか)、神経系の研究がメインです

やまない頭痛・資質なのか脂質なのか・LILRB4抗体は新規AD治療薬として、ミクログリア病態を改善できるのか?

エアロバイクを寝る前に漕いでるのだけど、起きると頭痛が多い気がする。

酸素が足りなくなるのだろうか。

天気も春先悪かったし、片頭痛頻度が高くて困る。

 

卒論が片付いて、論文もさっさと添削して返して、さぁ一休み、とかおもっていたんだけど、今度は学術振興会の添削とくる。

これなぁ。

最近申請落ちまくってる私になにか言う資格があるんだろうか、とは思うけど、まぁ書いてる人は悪いところが見えないもんだから。

自分のところの学生は資質が脂質で資質なのである!みたいな文章を書いてきたので、歯痛が痛いわ!あと脂っこい(?)とコメントして返しておいた。

まぁ仕方ないんだけど、なんか将来的な目標がふわっとしてて、こんな感じ。

www.ehonnavi.net

何にでもなって良いんだけど、とりあえずなにかになろうとしてくれと思う。

思ったより人生は短いんだぜ。

 

この論文を読んでいた。

Antibody-mediated targeting of human microglial leukocyte Ig-like receptor B4 attenuates amyloid pathology in a mouse model

Science translational medicineの最近のTopicなのかな。

まぁ面白かった、ちょっと抗体療法の勉強をサボってたら、色々しらない背景があるのねって感じ。

最近はMicrogliaの機能低下がアルツハイマー病と相関しているんだろうという風潮で、炎症性サイトカイン上がりますよ‐貪食能下がりますよ‐という病態が注目されている。

そういう事が起こると、凝集性の色々な毒性因子、特にアミロイドβの凝集体が代謝されなくなって、どんどん蓄積するという流れ。

さて、ではどういう原因があるかといえば、ミクログリアの貪食性を増すようなシグナルを亢進するか、抑制系のシグナルを抑制するかの二択とはなる。

そういう免疫系の細胞について、亢進・抑制のシグナルを司る細胞外レセプターファミリーとして、leukocyte Ig-like receptorというのがある。

これはファミリーの遺伝子がまとまって一つの染色体の近い領域に存在している。

どうもアルツハイマー病で、抑制系のLILRB4という分子種が増えるんだ→ミクログリア抑制、という仮説らしく、じゃぁ抑制系の抑制系は促進だよね!ということで、抗体療法でアンタゴニスト的な治療を目指していくとなる。

ちょっと違うけど、イメージ的にはオプシーボ様の作用を目指すことになるか。

厄介なのが、LILRB4のホモログはマウスに存在するものの、発現制御系に違いがあり、ヒトのようにAD病態で増加というのが再現できないらしい。

ちょっと温故知新で面白かったけど、先程行ったLILRが集積している遺伝子部分というのがあるので、昔のトランスジェニックマウスでよく使われていた大腸菌人工染色体(BAC)で、ヒトの抑制系のLILR部分をまるっとマウスに発現させてモデルを作っていた。

ものは使いようなんだなぁと思う、単に新しいものを追いかけるだけでは、真に新しいものは見つからないのかも。

このやり方だと、プロモーターやエンハンサー部分などの役割がヒトと同様となることが期待でき、いくつかのLILRのうち、本当にミクログリアに゙発現が多いものを同定できるそうな。

実際、人と同じくミクログリアでLILRB4(他の抑制系LILRは増えないみたい)が多くなり、AD病態で更に上る。

そのマウスをみんな大好き(読む私は嫌いな)5xFADマウスに掛け合わせる。

さて、このマウスが元のマウスと変化するのかがきになるが、モデルの目的としては、これでLILRB4感受性のミクログリアができたことになるから、じゃぁ抗体療法をして、AD病態の変化を見ようかとなる。

抗体を使うと、Aβプラークが小さくなり、ミクログリアもAβ貪食をしてるとのこと。

これで、認知機能を回復できていたら、もう一つ上のジャーナルだったのかもだけど、どうも周辺症状っぽい、高架式十字迷路試験における不安行動の改善があるくらいらしい。

まぁ系があまりにもアーティフィシャルなのかなぁ、5xFADだけでもいくつかの遺伝子の強制発現があるし、そこにBACだからなぁ。

かるくミクログリアが元気出したくらいではおいつかないのかも。

厳密にやろうしたら、いちど上記の系で出した結果を、ノックインマウス+ミクログリアLILRB4Tgマウスでやり直しくらいになるだろう。

言うて、時間とお金の制限はいつでもつきまとう、できるところで勝負というのも仕方ないときがある。

さてさて、このLILRB4の面白さはそこではなくて、これがApoEをリガンドとするところにある。

Aβ結合ApoEをリガンドとして認識すると、下流シグナルが動いて、もうお腹いっぱい、貪食できませんとなるらしい。

使った抗体はLILRB4とApoEの結合を防いでいるとのことで、はーApoE悪者説の出来上がりではある。

最近の抗体療法事情(Aベータ以外)も勉強できて面白い論文だった。

上にも挙げたけど、アーティフィシャルな実験系が限界ではあるのかな。

でも検証をかなり入れていたからそんなに目立たなくはあった

やっぱり欠点は自覚して、そこを何とか埋めようという努力のある論文は光るものがある気がする。

この抗体は脳以外で免疫を促進しちゃう可能性はあるような気はした。

あと本当に貪食能を促進するのがベストなのかはちょっとわからないよなと思った。

Aβ凝集体なんか消化できにくくて、無理やり食べたらパーンと割れちゃうんじゃないかな、ミクログリア