うーん、論文の査読はもうちょっと穏やかにやろうと思った。
いまやってる論文の筆頭著者が査読に対してえらく攻撃的で、げんなりしてしまった。
まぁそこまで的外れなことは言ってなかったと思うけど、Discussionがデータに対して過剰じゃね?という指摘が琴線に触れてしまったらしい。
データに対する考察があれば、好きなことを書いてもいいっちゃいい。
別に査読者は編集者じゃない事を忘れてはいけない。
でも引用数が100超えてるしなぁ、このデータでここまで書く著者はちょっとなぁ。
レビュアーに攻撃的に出て良いことってあるのかな。
MARK2というEIF2aの新しいキナーゼの話をつらつら読んでいた。
細胞というのは色々なストレス下でタンパク質合成を停止して、細胞活動の負荷を減らすことによりストレスを乗り切る、もしくは細胞死を起こして細胞を切り捨てようとする。
これは翻訳開始のキーレギュレーターであるEIF2aがリン酸化されることによる不活化がキーとなっている。
このEIF2aをリン酸化するキナーゼはこれまでに4種類知られている
- PERK:未成熟のUnfolded proteinの小胞体への蓄積により活性化される(いわゆるER stress)
- GCN2:アミノ酸不足や紫外線不足で活性化される
- PKR:ウイルス感染などにより活性化される。ちなみに哺乳類などで、長いdsRNA(ウイルスもこの構造を持つ場合がある)を細胞に導入すると細胞死が起こるのはこのメカニズムで、この影響を回避するためにsiRNA(21merのdsRNA)が開発されたのがRNA interferenceの端緒である
- HRI:ヘム鉄の欠乏により活性化される。
今回は5番目の因子としてMARK2が同定されたということらしい。
おお、なんか太陽系9番目の惑星(冥王星は欠番になっちゃたしなぁ)が見つかったくらいの感覚。
ほんまかいなとは思ったが、もうちょい細胞死への因果関係などがあるとNatureでもよさそうだけど、まぁ足りなかったか?
MARK2は多くの神経変性疾患で活性化されており、タウのリン酸化に関わるという論文も見つけた。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/bi401266n
どちらかというとMIsfoldingタンパク質が存在すると活性化される酵素、ということみたい。
MIsfolding→HSP90の活性化→PKCδ活性化→MARK2活性化というながれ
PERKとの違いはERでなく、細胞質でのタンパク質凝集シグナルの関与という棲み分けなのかな。
今回は家族性ALSの一つSOD1変異体、これがMIsfoldingな状態を取りやすいのだが、その状態を感知する事により、EIF2aの不活化につながり、神経細胞死につながる(と考えている)ようだ。
スキッとしてて面白い論文だった。
個人的にはNatureとかでも良さそうな気がするけど、生理的重要性はいまいち示せてないのかも。