へのへの先生仮免中

やっぱ教授になるまで仮免中で行きます(なれるのか)、神経系の研究がメインです

漢詩の部屋・月にブツクサと・CDK5活性化サブユニットP25は神経活動に依存して産生され記憶の選択を制御する・LRRK2リボソームタンパク質をリン酸化するマジか

春暁
春眠不覚暁
処処聞啼鳥
夜来風雨声
花落知多少

さて、日曜日に母と姉夫婦のうちでご飯を食べたのですが、春暁の作者は誰かというお話になりました。
皆は杜甫だと言うのですが、私の言うとおり孟浩然の作でありました。
理系では屈指の漢詩マニア(役に立たない)

多分皆が間違えたのは杜甫春望かなぁとおもいます
国破山河在
城春草木深
感時花濺涙
恨別鳥心驚
烽火連三月
家書抵萬金
白頭掻更短
渾欲不勝簪

一番好きなのが李白の静夜思です。シカゴでYingさんと李白についてお話したもんでした。
日本語で読んでも美しいのは、やはり詩想が美しいからなんだろうなぁ
  牀前看月光  牀前 月光を看る
  疑是地上霜  疑ふらくは是れ地上の霜かと
  挙頭望山月  頭を挙げては山月を望み
  低頭思故郷  頭を低れては故郷を思ふ 

ああ今日も月が綺麗だなぁ

さて4月も中旬、少し焦りながら論文に手を入れています。
様式美として、とあるデータが欲しくなっては、実験しかけたりしています。
様式美ってのは、別に無くてもなんとかならぁねって事。
それでも努力のかいあって、一つデータが増えました。
論文に載せるかどうかは迷うところだけど、結果が出てさえいれば、ある程度自信を持ってDiscussionに挑むことができます。
逆にやればやるほど迷図に入り込むようなデータも出てきます。
真実は一つ、のはずですが、さてさてどうしたもんかなぁ。
まぁDiscussionである程度自信を失えば良いということ、断言が禁物ということを教えてくれるのでした。

Cellを見ていたら、Neurodegenerative diseaseネタが二件。
ああ、P25ネタ、あんまり好きじゃないんだよなぁ、とか思いながら読みました。
P25ってなんやねん、僕も知らない。
とか書いても厳しいので説明すると、まずCDK5というキナーゼの活性はシナプスの機能調節に関わり、記憶の形成に重要とされているのですが、CDK5の活性調節にP35というサブユニットが結合することが重要であることが知られています。
ところがAlzheimer病などの神経変性疾患ではCalpaineというカルシウムシグナルにより活性化されるプロテアーゼの活性が高くなり、P35は切断されて短くなりP25となります。
P35にくらべ、P25は膜結合を促進する脂質修飾ミリストイル化ドメインを欠いており、CDK5を異所性に活性化し、tauの高度リン酸化などを介して、神経細胞死や記憶形成機能の低下に至ると考えられています。
まぁそのように、ずっとP25は悪者だと考えられてきたのですが、ちょっと待て、実は記憶を整理する(無駄な記憶を忘れる?)機能にP25ができることは重要みたいだよ、って論文で、思ったより面白かったです。
NMDA受容体の活性化によりP25は産生されること
P35のカルパイン切断が出来ないような変異を導入したマウスでは記憶を忘れるという機能が低下、神経活動の長期抑圧、でいいんだっけ、がおこるそうです。
DARPP32というドーパミン神経の活性調節に重要な蛋白(久しぶりにみたなぁ)が、海馬にも発現しており、AMPA受容体のシナプス表面への局在を制御しているらしいのですが、CDK5はDARPP32を燐酸化することにより、間接的にAMPA受容体の局在を制御するとのこと。

一方で、アルツハイマー病モデルマウスにこの変異マウスを掛けあわせた所、色々なベネフィット(Amyloid蓄積の軽減、記憶機能の改善などなど)がありました。
ということで、実は意外にP25の産生自体は、生理的に重要であったのですが、やはり過活性は良くなく、ADのような神経変性疾患では依然有望なターゲットであるようです。
やはり生きものまで作ってみないとわからないことはいっぱいあるなぁと思うのでした。

もう一本は(多分)永遠の恋人、LRRK2のお話でした。
またDawson博士一派か。
LRRK2の基質たくさん見つけてますが、いっぱい見つけすぎて、仮説も色々で、そろそろ一つにしなさい!って叱りたくなります。
いやいや、まぁそんなこと言ってたら研究できないですけどね。
すごいラボだと思います。
まだほとんど読んでないのですが、タンパク質の翻訳に関わるリボソームの構成タンパク質、s15はLRRK2と相互作用し、リン酸化される。
S15はパーキンソン病病因変異であるG2019Sによるキナーゼ活性ドライブに反応して、高度にリン酸化される
リン酸化が進むと、普段は行われない異常な蛋白翻訳が始まり、最終的にはドパミン神経の細胞死に至る(ショウジョウバエモデル)
一方で、s15のリン酸化サイトをアラニンに置換すると、細胞死は抑制され、ショウジョウバエもでるの行動異常も抑制されるそうな。
ううむモデル系を持っていると強いのう、最近の神経変性疾患のはやりは、実は転写からタンパク質翻訳機能の異常モデルのような気もしてきたな。
ALSなんかはそうなんですが、Huntington病やトリプレット病もそのカテゴリーに入るのかも。
今回のでParkinsonお前もか!と言う感じで新しいお仲間が増えた。
さてさて、LRRK2の正常機能ってなんなんやろって思う今日このごろです、なんなんでしょうねぇ。
小胞輸送か、脂質代謝に一票入れたい(そして研究したい)んだけど。