へのへの先生仮免中

やっぱ教授になるまで仮免中で行きます(なれるのか)、神経系の研究がメインです

疲れてるならブログを書くなと・友遠方より来る・突き詰めるほど危うい・アルツハイマー病の病因遺伝子によってタウのレベル・リン酸化に違いが起こる。

つかれてる
こころのスカリー
そっと告げ
姉に憑かれてるの?ときかれて、いいや僕が憑いているんだよ・・・って何の話だ、まぁとにかく私疲れてるらしい。
今日くらい早く帰ろうかと思っていたのだが、色々トラブルが重なり11時位になってしまった・・・
爆睡して2時起き、何をやっているのか。

後輩のSTさんが表敬訪問してくれたので、大学の周りを案内した。
あまり周るところがあるわけでもないが、昔話をしながら散策
彼女の務める某製薬会社も色々改変があり、知っている人で研究を続けている人も少なくなってきている。
研究好きな私としては、アカデミックというのは天職なのかなぁ、そんな事をおもったりもした、まぁ生涯年収は下がっただろうけど。
イデアでなくなったら終わりかなぁとも思うし。

大学の周りを歩いてたら、先生!と挨拶されることも多くなり、実際3年しかいなかったのだけど、それなりに歴史も刻んできたということになる。
僕が入った時に植えられた蔦も、いまはコンクリートを覆わんばかりであったり、慢性的な腰痛であったりに、年の流れを感じずにはいられない。
サンプル数も莫大になるわけで、リストを作りながら、これはどれだけかかるんだと気が遠くなる。

とりあえず論文は土日で直した所まで送付してみた。
甘えかも知れないが、自分だけで上げられる完成度と言うのはある程度のところでプラトーに達するので、色々人の意見を聞いてみるという部分が必要とされたりする。
ほぼ4ヶ月ぶりに自分の論文を概観したわけだが、うんざりするほど理屈っぽくて嫌になった。
連想ゲームでもやってるのか。
堅牢に条件を突き詰めれば突き詰めるほど、見えてくる危うさ、じゃぁそれアルツハイマーに関係あるの?君の使った限定的な実験条件だけで起こる現象じゃない?という疑問点が浮かび上がってしまう部分もある。
アメリカ人は、というとちょっと偏見かも知れないが、多分ここまでやらないで、アイデアだけで勝負するだろうな。
それが正しいとは思わないけど、データが少ないというのは矛盾を飲み込む曖昧さを残すことが出来るという事でもある。
矛盾があるのは当たり前ではある、だって生体内という複雑な事象の一部を切り出して我々は解析するのだから。
現実の病気は様々な因子によって緩衝されるため、病気の症状と一部矛盾があるからといって、モデルが否定されるということでは無い、モデルを建てることには大きな意味がある。
理解しやすいモデルを必要最小限のデータで示すというのも、論文の一つのあり方だとは思う。
日本人とドイツ人はやりこんでしまいがちなんだよな。

さて、サイエンスネタ、そういえばアルツハイマー病の変異をもつ遺伝子によってタウのリン酸化に差ができるという論文があったか。
ええと、家族性アルツハイマー病の病因遺伝子としてはAPP、Presenilin1、2があり、PresenilinたちはAPPを前駆体とするアルツハイマー病最重要分子Aβを切り出す酵素であることから、Aβの産生こそがアルツハイマー病の主要な病因であるとするアミロイド仮説が強く提唱されている。
Aβが蓄積するのはじつは発症の数十年前であったりして、要するにわたしの脳にももう溜まり始めてるのホント。
逆に言うと認知機能の低下とアミロイド凝集は完全な相関関係があるわけでもなく、実はその後に現れるタウという微小管結合タンパク質の蓄積のほうが良く相関する。
ながれとしてはAβ凝集がタウのリン酸化を引き起こすのだろうと考えられていて、APP変異、Presenilin変異でおこるAβ産生の異常(凝集性の高いAβができる)が、タウの凝集を引き起こすのだろう、と漠然と考えられていた。
今回はAPP、Presenilinの変異を持ったiPS由来の分化神経を使用した所、APPの変異体はよりタウのレベル増加リン酸化亢進が進むのに対して、Presenilinの変異ではそういった変化が起こらなかったとのこと。
興味深いことに、Presenilin(γセクレターゼ)の活性阻害剤を用いると、タウの発現レベル、リン酸化(凝集性と相関)が上昇するそうな。
逆にβセクレターゼ阻害により逆にタウレベル、リン酸化を阻害できる、ということを考えると、Aβの直前の前駆体であり、βセクレターゼによりAPPが切断されてできるC99の毒性とタウの毒性がリンクしているということになり、今やってる研究にも関連しそうで興味深くはある。
BACE1阻害剤を使えば一粒で二度美味しいAD治療薬というお話になるのかどうか。
まぁ深く考えると色々変な所も出て来るのだが、じゃぁPresenilin変異とAPP変異比べたら発症年齢変わるのか(変異によるとしか言い様が無いが)、あとは使ってる変異の種類、APPの変異のDuplicateのほうは話が合うとして、Aβの産生に関わるロンドン型をつかって同じような結果が出ているのは、彼らの理屈に会うのか。
Presenilnはそれなりだが、APPの変異のバリエーションが少なく、Swedish変異(C99を増やす変異)を使った検討があればかれらの示したいことにあった材料を揃えていることになったかもしれない。
C99押しをするなら、ちゃんとC99を全ての変異で検出し、C99とタウレベルの相関性を求めるべきであるのに対して、産生されるAβと相関しないからC99が怪しい、という理屈はまぁ弱いとしか言えん。
ただ面白いポイントははらんでるかもしれなくて、C99というのは輸送系に毒性を発揮する可能性があり、同様に軸索輸送に関わってそうなタウに何らかの影響をもつという可能性もあるんだろうか・・・